小林作都子『そのバイト語はやめなさい』(日本経済新聞社)を買う。
この本が何となく癇に障るのは、これはビジネスに於ける会話の仕方、即ちビジネス・マナーの本なのに、語学の本として読んでしまうせいだ。 この本では、他人にどのような印象を与えるかを問題としているのであって、学術的に正しいかどうかは必ずしも問題ではないのだ。 「ぜんぜんは、ダメのように否定的な言葉の前に使うものと、学校教育では教えています。肯定の前で使われると、お客様には違和感があり、バカにされた気分になります」(P43)と述べているのは、その例だろう。 筆者は、「全然」は肯定で受けてはいけないなんて決まっていないって事をちゃんと知ってるが、世間の認識はそうではないのでヤメロ、と言ってる訳だ。 最近、馬渕哲・南條恵『良い店悪い店の法則』だの、人生の達人研究会編『ワルの知恵本』だのと、他人の心理、他人に与える印象を意識的にコントロールする事について解説する本が漸く、というか、とうとう(?)出てきたが、その類の本だと思えば、この『そのバイト語~』にも納得はいくのだが・・・やはり、どうにも釈然としないものが残る(余りにも主観で書き過ぎだからってのもある)。 筆者に、じゃあ、「沙漠」を「砂漠」、「侵食」を「浸食」と書いたり、「輻射冷却」を「放射冷却」と言ったりする事についてはどう思うのか、訊いてみたくなったりするのだ・・・。 余談だが、例の話題の本、北原保雄編『問題な日本語』(大修館書店)では、「全然」を肯定で受ける事について(P17)若者達は、それが歴史的に見て正しいと知っていて使っているのかといえば、そうではなく、天気を気にしている者に「全然いい天気だよ」と言ったり、大丈夫かと問われ「全然平気!」と答えたりする様に、「否定的な状況・懸念をくつがえし、まったく問題がないという場合に用いる」、即ち「あなたが思っていることとは違って」というニュアンスで使用しているのだ、と分析していて、流石だ。
≫ >『問題な日本語』
言葉ってのはまさに生き物で、専門用語でもなきゃ正誤の判定なんて本来出来ないって言ったら流石に言い過ぎだけど、それ程のものである訳で。 だから、まず違和感の原因・その語の根拠まで言及した上で、アリ・ナシも言い切らないこのスタイルは実に理想的だと言えますね。
≫ イカサマ / link / 2005-04-24 17:12 / R3iSA5Mw
≫ 『そのバイト語はやめなさい』は読んでいませんが
『問題な日本語』は読みました。 違和感を感じる言葉の数々が説明されていて それでいて全否定するわけでもなく、ちゃんと「現代の言葉」として捉えていましたね。
≫ エルリッヒ / link / 2005-04-24 08:46 / dFw9qR1g
≫ 今、国語辞典と漢和辞典引いたら、「浸食」はアリっぽい(しかも河川が地表を削る意味で。現代国語辞典だけならともかく、漢和辞典でもとなると…)んだが、地学では「侵食」が正しく「浸食」はナシだったハズだが…(だって「浸す」んじゃなく「侵す」んだから)。
≫ イカサマ / link / 2005-04-24 00:31 / mtLB8VNM
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