本当はこの世界に、僕達の人生に、ポジティブになれる根拠なんて何も無いから、多くの物語作品は嘘だって事になる。勿論、センチメンタリズムに塗れた作品も嘘。性急で浅薄な嘘。
全く以って信用出来るのはあらゐよしひこ作品だけだ。斜に構えているのではない、ただ冷めた表現を、その視点を、誰も否定出来はしまい。 「Dr.パッチワーク」シリーズは天才外科医のミステリー、「使い魔エンブリヨ」は、いじめられっ子が魔法で報復する話。オーソドックスなエンターテインメント作品の体裁だが、そこに嘘は描かれていない。世の中こんなもんだ。 今夏コミックマーケットでサークル東山神兵から『Dr.パッチワーク 夢鏡の女。』『使い魔エンブリヨ』第3巻を買った。 「パッチワーク」は猟奇の世界だが、今回は何と恋の話。いつもと違って、そこに明確な不幸が無い、様な? ネタバレを恐れて上手く語れないが、今作のギミックは脳の働きが電気信号なら、混線したら? というもの。倫理的には当然間違ってるハナシがいつもの様に語られる。 「エンブリヨ」は新展開。主人公と同格?のライバル・キャラ登場。作者曰く、このキャラと主人公で競り合った後巨大な敵に対し共闘、というのも考えたが、結局このキャラをラス・ボスに据える、と。実際、この悪役との決戦へ向かう流れで今巻は終了している。 これは一つの典型的なパターンであるが、主人公は小悪党で、敵役がその小悪党の目にも余る極悪人だったってだけで、つまり正義の味方はそこには居ない。正義による解決は無い。作者も後味の悪い結末を用意していた風にコメントしている。が、考え直しているそうだ。いずれにせよ、あらゐ氏ならあらゐ氏流に料理するだろう。斜に構えるのではなく、エンターテインメントすら冷めた目で眺める作家流に。願わくば、そのスタンスを違えぬ事を。 というのは、後書きのいじめ問題(正確には“いじめ問題”問題)についての語り口が興奮気味だったものだから…。
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