僕は奇抜な作品ばかり取り上げる訳じゃない。
治島カロ『拳のマリア』を買ったのは、まだコミティアが流通センターで開催されていた時だ。今夏のコミケに氏のサークル奇人別動隊が出ていて、そこで『拳のマリア1・2・3総集編』が売られていたので、買った。 僕がいつかの流通センターで手に入れた本の収録分が第1話だった。今回、突然その続きからラストまで読めたって訳だ。 終戦後まだ間も無い日本。あちこちで催される格闘技興行に出場する事で糧を得ている金髪・碧眼の白人にして日本語ペラペラの主人公、リング・ネームはマリア・オハラ。―マリアって女の名前じゃないか、昔の女の名前を背負ってリングに上がるのか。いや違う、「「俺の女」じゃ……なかったから」。 彼は八百長を請け負う。但し、真剣勝負で。相手は本気だ。しかし彼は興行主から負けてくれと言われれば負け、勝てと言われれば、勝つ(!)。敗戦の傷癒えぬ頃の日本。ガイジンの彼は悪役として重宝された。 が、ド白人のガイジンだけど「久し振りに畳の上で寝れる」なんて口にしちゃう様な彼に、その役回りは辛くはないのか? 彼に負けたボクサーに、同じく彼に倒され引退したキックボクサーが、彼のファイト・スタイルの特徴を説明する。もっと打ってくれとばかりに前に出てくる為ヒッティング・ポイントをズラされ、結果攻撃の威力を殺される、と。 彼は、その背負う罪の償いの為に、自身を悪役として忌み痛めつける興行に出続ける。それは不健全な行為だ。そのまま悲劇として終幕するのか、安易にポジティビティを獲得するのか。もしかしたらそのラストに、何の変哲も無い物語と思うかも知れない。 しかし、奇抜でない作品イコール月並みではない。説得力を持った普通の作品を、王道と言う。 この漫画は、そう呼べる。
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